おなかのなかにいる子どもは、ひとの声を内側で聴く
響きそのものが身体を通り抜けていく
同じように、じぶんに対するじぶんの声も
じぶんが一番最初に、しかもとても深く受けとる
眠る前まどろみながら
近頃の嬉しかったこと、うまくできなかったこと
多くは言葉や匂いなんかの体感を伴いながら
丁寧に丁寧に 取り出して 並び替えて 終えていく
映画みたいな一瞬一瞬の画の美しさに救われて
一言一言の台詞の優しさにくるまれて
流れる音の様子に胸躍らせて
じぶんが大切にしたいこと
どうしても大切にできないこと
じぶんが進んでやること
どうしても許せないようなこと
じぶんがしてしまったひどいこと
されてとても嬉しい気持ちになったこと
同じように並べ直して じぶんのことを知る
「そんな風にすべてが自由な時間はほんとうに短い」
「でも、そのあとに気付くよ」
「一杯のコーヒーのなかにも、自由はあるよ」
タイミングで与えられる言葉は
声の大きさとは関係なく
きらりと光ってそのひとの口元からこぼれるよう
その輝きが消えないうちに目で捉えて
手を伸ばし そっと受け止めて 一息に飲み込む
大事な言葉はとても少ない
とても少ないから
とても少ないから 内側で何度もなぞって
その響き忘れないように 身体で覚える
覚え終わったそれは、ぽちゃんと音を立てて
底に沈む
砂がざらざらとその重たさにつられ渦をつくる
底に沈んだそれは、やがてそのものになる
そして誰かとまた出会ったとき
一年前のそれのように ひそやかに電流を発して
きらめきを肌に散らして