髪に手が触れる。
さらっ さらっ 音がするみたいに感じている。
この流れは、こう着地するね。
ここの乱れは、内蔵の貧血から。
ひとつひとつ丁寧に今の状態をおそわる。
「伸ばそうか」
2年間触ってもらいながらの初めての提案に、わたし大人になったんだなとそう思った。
一晩たって、朝。
頭がすっかり軽くって驚いてしまう。
余計なものがないのだ。
いらないものもない。
生理が終わったのもあるだろう。
新しい身体になったことをひしひしと感じるような、そんな朝。
しっかりたっぷり眠ったあと、朝日に照らされながら起きる。
ここ数日の幸福な寝起きといったら。
新しいおうちでもこんな風に目覚めたい。
3月が終わったらどんな暮らし?
想像もできないね。
パタパタと展示販売会の売り上げを改めて計算し、こんなに大きな金額が動いたのかと感動する。
今までいただいたお仕事のどのお給料よりも高く、そして今までのお仕事にはない軽やかさだった。
喜びに浸りながら、空いた時間に書き起こしのデータを仕上げる。
ひとつひとつの働き方がうまくコンビネーションを描く。わたしも全部のお仕事が好きよと、取材されてるひとが嬉しそうに働くのを眺めながら思う。
あ、もうこんな時間。
なんとなくまだ出かけたくなくて、だらだらとシャワーを浴びる。
歯磨き、髪、顔、身体。
いつもの順番で触れているけれど、やっぱり新しい身体になっている。
嬉しいやら照れくさいやら。
バスに揺られる。
あのひと今何してるかな。
あのひと今元気かな。
ぼーっとしながらひとを思う。
出勤まで30分あまる。
ラッキー、いつものお店、わたしの特別な場所へ足が急ぐ。
扉に手をかければ金属の感触が冷んやりときもちいい。
これから感じる嬉しい体験を予感して、テンションがじわじわとあがる。
なんでもないフリをして、いつものようにカフェラテをお願いし、今日はいい気分だからスペシャルと、正方形のチョコレートのキューブも頼む。
チェゲバラの顔が映り込むキューバの様子を読みながら、ただ待つ。
「どうぞ」
差し出された美しいエスプレッソと牛乳混じり合う様子のコップに、もうため息ついちゃうくらい嬉しくなる。
チョコレートのキューブには、たっぷりとカカオニブ。
注意深くフォークで切り取って、口に運べば、たちまちパラパラパラダイス。
濃厚な牛乳の味と、うるさくないチョコレート、賑やかな食感。
カフェラテの具合も完璧で、わたしは沖縄でこのお店が一番好きだと、大勢の人に叫びたい気分になった。
写真も携帯もだめだから、ひっそりと我慢。
幸福が身体ぜんぶに広がって、隠しきれずに口もほころんでしまう。
いってらっしゃい。
見送られながら、お店へ。
いつものリズム、いつもの匂い。
大好きなものしかないお店のなか。
すーっと心が落ち着いていく。
あっという間に時間は過ぎて、閉店。
ばいばいまたねと挨拶しながら、向かいのタコライス屋さんへ。
おじちゃん今日もニコニコ優しいね。
「今日もがんばってて偉いね」
いつも褒めてくれてありがとうと笑いながら、タコライス大盛り、ソースも大盛りとお願いする。
ここのタコライスも沖縄で一番好き。
同率一位のキンタコと違うところはチーズだね。
ここのチーズは白いの!
そして上に乗ってるソースがフレッシュで美味しいんだ。大好き。
今日もおつかれさま、見送られながら横断歩道。
ぱっと目に入る夕焼けの道の美しさ。完璧な瞬間、どこか感じる懐かしい匂い。
日が暮れるのだ、と思った。
今はまたバスのなか。
ゆらゆら揺られて125番。
しばらくしたらお家の前に停まるでしょう。
大学からそこまで離れていない愛おしい我が家。
バスの窓から見える外はもうすっかり夜の色。
帰ったら洗濯して、ゴミまとめて、ゴミ出して、床掃除して、夜のミーティングに備えなくては。
パタパタとやることの順番をなんとなく決めながら、気持ちは日曜日へ向かってく。
お休みだからではなく、特別な日になる予感だから。
どちらのイベントにも必要な情報が詰まってるだろうとわくわくしてる。
わたしもはやく、そうやって大勢の人に声を伝えられるひとになりたい。
焦らず急がず着実に。
目の前のことひとつひとつに取り組もう。
、、ここまで書いて、思い浮かぶ今朝のおばあちゃんとの電話。
やり忘れてる役場の手続き終わらせないと実家に帰りづらいなぁ。
いつやるか決めないと。
脳みそも心もいそがしいね。