NOW 500→1000

「生きる」を重ねる

木と向き合う 

指でなぞり、線をさがす

ぴったりのサイズにはかり、刃をあてる

心を決め、不安を断ち、スイッチをいれる

作動する機械の音に一瞬ひるむも

ただまっすぐ、力を込めて切り落とす

繰り返し繰り返し作業を行うなか

いつの間にか

「生きる」を誰かに明け渡していたじぶんと出会う

言葉が軽くなってパリパリに乾き割れていく

実態の伴わない言葉ほど無意味なものはない

ただの音の並びは何の意味も持たない

風を肌で感じながら触れるものから必要なものを選ぶ

口のなかにそれをいれ咀嚼し栄養とする

さんさんと降り注ぐ光を浴びながら、手ですくい水を飲む

繊維をとり糸を紡ぎ布を織り、祈りをこめた衣を纏う

たゆみなくながれていた時の流れのなかで

当たり前にすべてをじぶんと大地との対話のもと

静かに粛々とおこなっていたじぶんの目

まっすぐにこちらを見つめるその目を

まっすぐに見つめ返すことができないでいた

木と向き合う

指でなぞり、線をさがす

刃をあて、ゆっくりと形を抜いていく

今までできなかったことができるようになった

そのきっかけひとつで全体が変わっていく

「生きる」を誰にも明け渡さない

そんなことできるのだろうかと不安になったとき

太陽に頬をなでられた

風が草のなかを通り素足をくすぐる

夜になれば月の光が水面に道をつくりだし

木々は当たり前に呼吸を繰り返す

その景色を見た

ただ、その景色を見た

すべて必要なものは最初からここにある

その事実はあまりにも当然すぎて少し悲しかった

でも、すべては最初からここにあった

その小さく大きな気付きは

きっとこれからの人生を支える土台になる

そう思う瞬間だった

 

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