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換気

草に寝ころび、二人の子どもと一緒に空をながめる
じっと息を潜めていると自然に笑いが溢れてしまい止まらなくなる

絵本に出てくるような、映画のワンシーンのようなパン屋さんの敷地のなか、パタパタと駆け回りはしゃいだ夕方のこと

「もうすぐかまどに火をいれるから見においで」

心地よく耳に届く声の深さに喜びながら、そのときがくるのを楽しみに待った

案外早く、煙はあがりはじめて、見逃してはいけないという気持ちと早く見たいという気持ちが混じり合って興奮しちゃって、島ぞうり脱ぎかけながら急いで走っていった

かまどに火が入っているのを見るのは初めてで、最初は一人で圧倒されてしまった

時折窓から吹き抜けていく風に軽く抱きしめられながら、火がゆっくりとかまどのなかで大きく育っていく様子を目に焼き付けた

その様子に気づいた子どもたちがぱたぱたとかまどの方に近寄ってきて、何をしているのと、まず視線で尋ねてくる

ゆっくりと唇に指をあて、声を小さくしてから「かまどを見ている」と答え、きづくとひとつのストーリーをシェアしていた

ここでパンの種がパンに変わっていくのだと、それをわたしたちは食べているのだと話をしながら、みんなで同じ揺れる炎をみた

心と心の波が同じ調子のリズムを刻み始めて、その空間のなかにいるひととひととの境目が緩やかになった

でもその瞬間が破れてしまうのもまた簡単なこと、けむりがすごいから出ておいでと、わたしも親になったらその目線になるんだろうかとその声かけに少し寂しくなりながら、炎の美しい様子から煙、それもわたしたちの背にはあたらない高さに流れていた煙に心が向いてしまった子どもたちの背中を見送った

わたしの口から漏れる言葉は、内側から形を持ち出てきた言葉は、力を持つだろうか

少しいじけた気持ちのまま、もう少しお酒を飲もう!と意気揚々、修道女が78人でつくった白ワイン、果物の皮まで大事につかってとうとう皮も一緒に発酵させてしまったという宝石のような色をしたオレンジ色のお酒、ひとりぼっち隅っこで炭火で大事に焼いてくれたお魚があうのなんのな日本酒に、、、

目が回ってしまうくらいたくさんのお酒を飲んだ

飲みながらけらけら笑い、さっきまでは知らなかった人と肩を組んで陽気に話をした、ふわふわとした話もあれば、どっしりとした話もあったりして色とりどりな空間だった

誰かが何かを思って大切につくったものは人生を豊かにするんだなという月並みなことを考えていたら、ガラスに思いっきり鼻をぶつけてしまった

「鳥か!」と言いながら笑ってくれた少し先を歩くひとの姿を眺めて、うんうんとなぜだか嬉しかった、鼻は痛かったのだけれど!

なんだろう

そのままをさらけ出して生き続けるというのはどういうことだろう

でも、それしかできないのだ結局のところ

意識をしてこう生きているわけではなく、意識をして子どもと喧嘩をしてしまったわけでもなく、意識をして誰かを気軽に好きになるわけでもない

でも、そうやって生きているのは素敵だと思うというような言葉のプレゼントを頂いて

そうやって言葉にされると幸せいっぱいになってしまって、なんだか急に力が抜けて、「たのしく生きよう」と大好きな先生のように笑うきれいなひとのハグは違う力を込めてくれて

そう、換気のような一日だった

あの時間あの場所に流れていた真っ青な空気、美しいブルーの空気で身体のなかがいっぱいになった

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全然関係ないけれど、わたし男のひとに生まれていたらきっとこうなっていたんだろうというひとに生まれてはじめて出会い笑いが止まらなかった

視線のよこし方や、さらりとした身体の使い方、言葉の選び方なんかにびっくりするほど同質的なものを感じて感動した

もっといろんな話をしてみたかったんだけど、それはできなかった

あのひとの人生もきっと楽しいだろうなと、誰かの食べるお菓子を羨む気持ちでいるけれど、わたしはわたしの人生を生ききるのだ

えいえいおー!