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パネトン・チコ

バスを降りて、木々の揺れるのを眺めながら信号が青に変わるのを待つ。工事現場で働くガタイのよいおじさんたちが弁当屋に入っていくのを眺めながら、横断歩道をわたり道の角にあるブルーの気球の看板のコーヒー屋さんへ。

大きな焙煎機、生産地の地図、ただよう香り。そして落ち着いた明るさを持っているオーナーがいるこのお店が大好きだ。オーナーはずっと年下のわたしを「はるなさん」と名前にさんを付けて呼ぶ。ちゃん付けでもなく、呼び捨てでもなく、さん付けで呼ぶ。

久しぶりに会えたことを喜びながらカウンターで注文。いつもモンターニャベロニカという豆を選ぶ、メニューに「ミルクと合います」と書いてあるからだ。だいたいミルクと合うコーヒーが好きだ。味わい深く良い香りがして、少しある苦味もなんだか大人になったことを教えてくれるようで、飲んでいるとクスクス笑いたくなる、美味しいコーヒーはわたしを簡単にご機嫌にする。

このコーヒー屋さんのコーヒーはとても美しい色をしていて、光に透かすとなんだか大地を連想するような豊かな色になる。黒とも茶色とも形容できないその色が大好きで、その下にたっぷりいれてもらう牛乳のホワイトとのグラデーションも大好きで。

いつも牛乳の部分を一口上手に飲んで、そのあと少しストローを浮かせてコーヒーの部分を飲んで、そしてコップを光に透かして色を眺めて、それら全部を堪能し終えたあとにかき混ぜて味を楽しむ。飲んでいる間も、見つめている間もしあわせをくれるのは、淹れ方もそうだし、オーナーの在り方や、いつもニコニコ話しかけてくれる奥さんの存在も、外にあるバナナの木なんかも要因のひとつにあるんだろうと思う。要するに全部がこのコーヒーの素晴らしさにつながっているのだ。それはなんだかとてもハッピーなこと。

そう、それでね、今日はパネトン・チコを食べながら、オーナーが長野でどんな暮らしをしていたか、そしてそこから沖縄に移住するまで、そして、今どんな思いで何を描いて仕事をしているかというお話を聞くことができた。

今まで聞いたどんなストーリーよりも胸が熱くなり、年齢もずっと上だしされてきた経験ももちろんずっと深いものなんだけれど、わたしはなんだか「同志」を感じて喜びに埋もれながらお話を聞いていた。

根っこに祈りを持つこと、志を持って仕事と向き合うこと、失敗にめげずに笑いながら前に進むこと、そして当たり前に周囲のひとに愛情を注ぐこと。沖縄にいる間の目標はこのオーナーと一緒に事業をやることだ!と改めて心に誓い、第一歩として今度畑に弟子入りすることになった。

畑仕事、苦手なんだけど、精進しよう。精進は、精一杯進むこと。妥協をしないこと。くよくようじうじすることに逃げないこと。

こんな未来を見ている、と話の流れで聞いていただいたときに拙い言葉で答えた。オーナーが「まぼろしが見えているなら、もう大丈夫、あとは進んでいくだけですね。」と言ってくれた。まっすぐ目を見ながら伝えてくれた。

その通りだと思った。わたしはわたしの見ている「まぼろし」を数年先で体験するために今を生きている。そんなことを思いながらお店をあとにして、そのままアメナルミチへ。

おやつどきにはちっこい友人たちとたわむれ、かまどで蒸してくれた死ぬほどうまいムーチーをいただき、赤ん坊と初めて意思の疎通が言葉を介してできたことに大喜びし、1歳になる女の子とリズムで遊び、仲間とお互いの一歩一歩をいたわって。

夕方になって移動し、気持ちのよい空間でピアノを弾いて、尊敬するひととその子どもと晩ごはんを食べた。良い休みの日を過ごさせてもらった。ひとりで生きていたらどの瞬間の喜びもなかった。

そう、晩ごはんを食べながら「はるなは性格いいよな~」と10歳の彼に言われた。なんでわかるの?と笑いながら聞いたら「声とか喋り方とか顔とか?」とまじめな顔して答えるので、すっかり好きになってしまった。愛おしいまわりのひとたち、この場所で生活できる喜びを体いっぱいで感じてる。喜多仲、この場所が好きだ。とても好きだ。

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