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上橋菜穂子が好き!(「食べ物」と「哀しさ」の描き方について)

 

上橋菜穂子作品が大好きです。

小学校の頃に地元の図書館で『精霊の守り人』に出会い、そこからドはまり。

シリーズをあっという間に読破し、新刊を心待ちにしていたのを覚えています。

 

精霊の守り人はこれ。

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

 

 本当に本当に面白いです。

NHKでアニメ化したりドラマ化したりで知名度もすごいけど、やっぱり文章が一番好きです。自由に想像できるから。

 

精霊の守り人は、見える世界・見えない世界が重なり合って一つの物語を編みます。

主人公は男の子。まだ幼い男の子。

そしてもうひとりの主人公はバルサ、女戦士?闘いのひと。

強いんです。

 

好きなのは、戦闘シーンのドキドキ感、ファンタジーなのにノンフィクションのように感じさせるくらいの細かい設定とその描写、キャラクター達の会話からにじみ出る特徴、誰にもわかりやすいその人間関係。

でもなんといっても、やっぱり二つ。

「食べ物」と「哀しさ」です。

 

新刊『鹿の王』を読みました。

そこにも描かれていた「食べ物」と「哀しさ」 

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

 
鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

 

 (この作品については後程くわしくまとめますが、医療関係のひとの感想がききたい!すごくききたい。)

 

そう、それでね。

「食べ物」と「哀しさ」。

 

「食べ物」については明快で、少し今の私たちの生活にリンクするものもでてくるんだけど、ヨーグルトはヨーグルトとして書かない、チーズもチーズとして書かない。

ヨーグルトは、乳が発行したもの、ラパテと書きます。

チーズは、乾酪と書きます。

く~~~、いいよね。

 

もうちょい詳しくこの良さを伝えると、たとえば上のリンクの『鹿の王』の下巻には、いろいろごちゃごちゃした民族争いのなか、相手の民族のところにとらえられたと思ったらごちそうをふるまわれたシーンで、この「異文化のごちそう」がすごく細かく描かれます。

ちょこっと抜粋すると。

中から、入って来い、という声が聞こえたので扉を開けると、炙った鴨の香ばしい匂いがふわっと漂ってきた。

狩ってからしばらく吊るして熟成させ、蜂蜜を溶いた特製のタレをかけながら丁寧に炙ると、皮に独特の照りが生まれ、香ばしくパリッと焼ける。腹には栗や胡桃などを詰めてあり、肉と一緒に食べれば口の中にコクのある旨みが広がる。この地方の秋から冬にかけての御馳走だ。

-上橋菜穂子『鹿の王』p.80より-

 

すんごく美味しそう。よだれ。

こういう描写に出てくる食べ物が現代の私たちも食べているものだったり、そうじゃなくて上橋菜穂子さんの描く世界にしかないものだったり、でもモデルはこういう木の実かなとか想像しながら食べるのがとっても楽しい。

ラパテはヨーグルトかな?とか。

 

こういう感想を持つひとがたくさんいたみたいで、こんな本も出されています。

なんとレシピ本!

 

バルサの食卓 (新潮文庫)

バルサの食卓 (新潮文庫)

 

 これは最初に紹介した「守り人シリーズ」に出てくるバルサのつくる料理たち。

まだ持ってないちょ~~~~ほしい!

 

そう、そしてもう一つの良さ。

「哀しさ」

 

人と人のどうしても相容れない部分。

愛しているが故のもやもや。

大勢の人間の命がかかっているからこそ単純にいかない国交。

かと思えば、単純な「誤解」からうまれる争い。

争いのなかで苦悩する個人個人の姿。

しきたりや慣習を愛しながら守られながら、それに縛られるひと。

 

でも。

何より一番の一貫したテーマは、「生きて、死ぬ」哀しさ。

どの本でも、どのストーリーでも、全く人が死なないものはなかったと思います。

殺しあったり、病気になったり、自殺したり、様々。

そして、その「生きて、死ぬ」が描かれるのは人間に関してだけではなく、動物や植物目に見えないものに関しても。

 

しかし、「生きて、死ぬ」だけではないんです。

ある者は魂だけになってひとを導いたり。

ある者は、想いをのこしたり。

必ずなにかに形を変えて、その命は消えることなく描かれる。

特に動物を狩るシーンや、それをさばき料理をするシーンが細かいのも、それを食べる人たちの描写が細かいのも、上橋菜穂子さんがアボリジニの研究をするなかで出会った「命をいただく」感覚からきているのではないかと思います。

(そう、もともと研究者だったからこそ、細かい描写から素晴らしい世界観を描けるのだと思います、かっこいい!)

 

著者に興味を持たれた方はエッセイもありますよ。 

物語ること、生きること (講談社文庫)

物語ること、生きること (講談社文庫)

 

 

そう。

そういう命の大きな流れのなかであまりに一人ひとりの「生きて、死ぬ」は小さい。

その小さいのなかでもがき、苦しみ、愛し、子を持ち、育てる、そして去る。

 

でも、その等身大の姿がかっこいい。

それぞれの立場でそれぞれの人生を生きる。

 

「生きて、死ぬ」こと自体はなんだかとても哀しいんだけど、同時にとてもとてもキラキラしてるというか、まぶしすぎることはない、明るすぎることはないけれど、ポッとあかるい。

 

こんな素敵な本がある時代に生まれてこられてハッピーです。

どれも素敵だから、ぜひぜひ読んでみてくださいね!

おすすめは『精霊の守り人』。

あ、でも恋愛要素があるほうが好きな人は『獣の奏者』かも。

どちらにせよ出てくる動物がなぁもう最高!

なるべく漫画もアニメもドラマも見ずに、本から…と思ってしまう面倒くさいファンです。

 

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

 

 大好きだーーーーーーーーーーー!